Old popular song

エンタの神様』という番組で初めて「小梅太夫」という芸人さんを見た。かなりの白塗りに日本髪、派手な女形の着物を着て、帯は前結び、手に扇子という出で立ちである。ふくよかそうな土台の上にされているので、見慣れぬものにはインパクトがある。日舞風な舞いとともに「チャンチャカチャンチャン チャチャ〜チャ チャンチャン」と耳に残るメロディー。それにネタをのせていく。決め台詞があって「チックショー」「誰か私をとめて〜」となっている。ある日おもちゃ屋さんで3、4才の小さな子どもがそのメロディーを口にしていた。「世も末か…」という言葉が頭をよぎっていた。

話が変わって、私は子どもの美術教室を開いている。授業中は音楽を流している。大体はモーツアルトなどのクラシックだが たまに「幅広い音楽を」ということで、図書館のCDコーナーで無作為に選んだものをかけている。先日は『うめ吉 明治大正はやりうた』(コロムビアミュージック)というのを借りてきて、授業前に聞いてみた。「猫ぢゃ猫ぢゃ」という一曲目のメロディーを聞いてのけぞってしまった。これが先の小梅太夫さんの「チャンチャカチャンチャン チャチャ〜チャ チャンチャン」なのである。

解説を読んでみる。

猫ぢゃ猫ぢゃ(明治二年 一八六九年)
江戸幕府が明治政府に変わったのが一八六八年。世直しを期待した民衆が新政府に幻滅しだした頃に、様々な風刺ソングが登場している。髭は官の象徴、その髭を揶揄する歌を歌うことで江戸っ子は憂さ晴らしをしたのである。江戸っ子のユーモア精神が色濃く表れたコミカルな曲。

とある。それではその歌とはどんな歌詞か。

猫ぢゃ猫ぢゃ


猫ぢゃ猫ぢゃと おっしゃいますが
猫が 猫がげたはいて
絞りの浴衣で くるものか
オッチョコチョイノチョイ
オッチョコチョイノチョイ


蝶々とんぼや きりぎりす
山で 山でさえずるのが
松虫 鈴虫 くつわ虫


竹に雀は 仲良いけれど
切れりゃ 切れりゃ仇の
切れりゃ仇の えさし竿


一里二里なら 天まで通う
五里と 五里と離れりゃ
五里と離れりゃ 風だより

この「オッチョコチョイノチョイ」の部分が「チャンチャカチャンチャン チャチャ〜チャ チャンチャン」なのである。
CDを聞いた子どもさんが言った。「(こっちは)さいご面白くないね。小梅太夫は面白いよ。(きもこわ面白い??)」

風刺精神を乗せた芸を是非見てみたい。