昆虫の世話

カブトムシの思い出三つ。

私は教室のお子さんとの雑談が好きでした。
ある日子どもたちと虫に関連する何かを制作していました。男のお子さんは高価な輸入カブトムシ(多分ヘラクレス)の話を聞かせてくれました。希少で高価なカブトムシが子どもたちを満足させるようです。ゲームでは『虫キング』が流行っていました。確かもう晩秋も過ぎた季節だったのでしょう。お子さんに「それでそのカブトムシは今どうなっているの」と尋ねると「お母さんが捨てちゃった。飼うのがいやになったみたいだ」と言いました。そして「あーあ、あいつに他のカブトムシやられちゃうんだろうな」ともらしました。気温とヘラクレスの関係や生態については分りません。しかし、「自分で飼わないからだ」と内心思いつつ、お子さんの感性がまさったような一瞬でした。

二つ目。あるお子さんが多分スーパーで買ったつがいの一般的なカブトムシを水槽ほどの大きさの虫かごで飼って観察していました。ゼリーを欠かさず大切に世話して、繁殖に成功しました。それで柔らかい専用の土床の中には幼虫がごろごろ入っていたらしく、お子さんのお母さんは大繁殖を目の前にして困惑気味に「これどうなるんだと思う?」と自問していました。あのカブトムシの種類は一体何で、その後どうなったのでしょう。

三つ目。まだ学生気分で旅行などしていた時分。昔からきれい好きだった彼女は不意に訪ねたときも清潔な新居を維持して、再会を喜んでくれて、もてなしてくれました。今思うときっと殺虫剤なんかも使いこなす衛生的なママさんだったんでしょう。その彼女が息子のためにと手に入れて、玄関先に置いた虫かごの中のカブトムシを上から眺めながら、「これ、ゴキに似てない?」と同意を求め、昔の面影をのぞかせました。

家で飼ったのはガーデニングをしている方の影響もあって、植物を荒らすバッタが「いらないから」とやってきたりして、バッタの餌としては、毎朝新鮮なイネ科の雑草を散歩の時に求めました。餌さがしも長く続くと、なぜか柔らかい新鮮な雑草がおいしそうに見えてきました。また同じ影響下、カマキリを飼いました。すると餌となるバッタを毎朝もとめることとなって、今度はバッタがおいしそうに見えてきたりしました。カマキリはその後たまごも産んで孵化し、大量の親と同じ姿をしたミニあかちゃんカマキリの誕生を、居合わせた子どもたちと歓声をもって眺めました。

私はカエルが好きだったんですが。